がん予防には抗酸化成分の多い野菜(e-スーパー健康野菜)を!

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日本人の二人に一人はがんになり、三人に一人はがんで死ぬという。がんの原因は遺伝子の変異によることが分かっているが、生活の周りの何が遺伝子を変異させるかについては、タバコ、農薬、食品添加物、放射線など多くの要因が挙げられており、そのうち何が主要であるかについては不明なままであった。ところが2016年日本がん研究センターと理研との共同研究で、肝臓がん患者のがん細胞のDNAの全塩基配列を300例について決定し、正常なDNA配列と比較したところ、がん細胞あたり10,000 箇所の点突然変異が発見された。点突然変異というのはDNAの塩基一つが変異することであり、その原因は活性酸素であることが明らかになった。

 活性酸素ががんの原因であると言われても、よく理解できないかもしれない。活性酸素は通常の呼吸でも発生するが、がんの原因になるのは主に慢性炎症で免疫細胞が出す活性酸素である。免疫細胞は体内で異物を発見すると活性酸素(スーパーオキサイド、O2)を出してその異物を破壊しようとする。その際に余分な活性酸素は細胞内に多く存在するSOD(スーパーオキサイド・ディスムターゼ)によって分解され、比較的安定な過酸化水素(H2O2)が生成する。過酸化水素は抗酸化成分によって水に分解される。この抗酸化成分としては、グルタチオンや野菜に含まれるビタミンCやポリフェノールなどが働く。グルタチオンはイオウを含むシステインなどからなる低分子化合物であり、食物の糖質が分解する過程で生成する還元物質によって還元状態が保たれる。したがって、活性酸素の消去には抗酸化成分の多い野菜の摂取とともに、糖質を一定量摂ることが必要である。

 体内の炎症部位で発生した過酸化水素は、上記のように十分な抗酸化成分があれば、水に分解されるので問題は起きない。ところが、分解されずに残った過酸化水素は細胞膜を透過して、周りの細胞に拡散していく。そこでもし鉄イオン(Fe2+)と出会えば、非常に反応性の高いヒドロキシラジカル(HO・)となり、DNAの塩基に結合して変異させる。これががんを引き起こす初発反応である。したがって、がんの予防の主要点は、十分な量の抗酸化成分を摂って炎症部位で発生した過酸化水素を消去することである。抗酸化成分は緑色の野菜に多く含まれるが、e-スーパー健康野菜には、通常の野菜よりも10~20倍多くの抗酸化成分を含んでいるので、より効果的にがんの予防に役立つと言える。

 ところで、変異するとがんを引き起こす遺伝子は発がん遺伝子と呼ばれており、これまでに約250個が見つかっている。ヒトの全遺伝子数を約2万5千個とすると、発がん遺伝子は全体の100分の1ということになる。つまり、100個の遺伝子に変異が起きると、そのうち1個は発がん遺伝子に当たることになる。ところが、一つの遺伝子はDNA上に隙間なく並んでいるのではなく、遺伝子と遺伝子との間に大きなスペースがある。今仮にそのスペースを1遺伝子の10倍程度と仮定すると、一つの発がん遺伝子に変異が起きるためには、100x10=1,000 回の点突然変異が起きると、平均して1個の発がん遺伝子に変異が起きることになる。さらに、一つの遺伝子を構成するDNAの中で点突然変異が起きるとその遺伝子の機能が変化するホットゾーンは、1遺伝子の1/10 程度とすると、ヒトゲノムの中で発がん遺伝子に変異が起きるには、約10,000 個の点突然変異が起きる必要があることになり、日本がん研究センターと理研の研究結果は、発がん遺伝子の変異を起こす確率として合理的に説明できる結果である。

 しかしながら、DNAの塩基に変異が起きれば、DNA修復系が働いてその変異をすぐに修復して変異が残らないというのが生物学の常識である。もし変異が残るようであれば、ヒトという高度な生物体が数百万年もの間基本構造を維持してきたという結果を説明できなくなる。その疑問に答えるのが、慢性炎症が起きればその周りの細胞に非常に多くの過酸化水素が降り注ぎ、DNA修復系が追いつかないほど多数の変異が蓄積する、ということではないか。日本がん研究センターと理研の研究結果は、がんの初発反応の姿を非常にクリアに我々に見せてくれたことになる。

 がんが発生する前には、その器官にウィルスなどが感染して炎症が蔓延化することががんの前兆としてよく知られている。一つの細胞のDNAに約10,000 個の点突然変異が起きると発がん遺伝子のいずれかが変異するということであれば、その10,000 個の突然変異を起こさなければ、がんを予防できることになる。そのためには、慢性炎症を放置しないことが重要であり、また同時に抗酸化成分を多く含む野菜を日常的に摂ることが必要となる。

 これまでに抗酸化成分として知られている化合物をサプリメントとして摂取した場合にがんが予防できるかを調査した結果によると、サプリメントではがんの予防効果は認められない、という結果が報告されている。それでは、野菜とサプリメントの違いは何か。抗酸化成分の機能はその還元型にある。特定の抗酸化成分をサプリメントとして多量に摂取すると、その還元型は酸化型に変わり、酸化型は抗酸化作用を抑制する。そのため特定の抗酸化成分を一度に多量にサプリメントとして摂取しても、体内で絶えず発生する活性酸素を有効に消去できないのである。野菜では、非常に多くの種類の抗酸化成分が含まれており、一つの抗酸化成分が酸化型に変われば、別の抗酸化成分によりまた還元型に戻されることが確かめられている。すなわち、野菜では多種多様な抗酸化成分のミックスという特質により、効果的に体内の活性酸素を消去できるのである。永い人類の歴史において植物の葉を食べることによりビタミンの供給だけでなく、体内で生成する活性酸素を消去してきたのであり、野菜はヒトの生存に必須の食べ物として定着してきたのである。

 日本人のがんによる死亡率は世界的に見ても非常に高く、近年ではさらに死亡率は上昇している。その理由は何か。一般的には日本人の平均寿命が延びたので、がんも自然に増加している、と説明されている。しかし、現在平均寿命の世界一は男女とも香港であるが、香港のがんによる死亡率は日本の約1/2であり、平均寿命が延びたのでがんによる死亡率が上昇したという説明は成り立たない。日本人でがんによる死亡率が世界一高いのは、野菜を食べなくなったことが背景にある。日本では野菜の消費量が減少している一方で野菜ジュースや青汁の消費が上昇しているが、野菜ジュースや青汁は製造過程で熱処理されるので、抗酸化成分やビタミンの多くは酸化されて失活している。そのため、野菜ジュースや青汁を摂ってもがんの予防には役立たないのである。やはり、野菜そのものを日常的に摂取する必要がある。通常の野菜よりも10~20倍も抗酸化成分の多い e-スーパー健康野菜は、がんの予防効果もそれだけ高いといえる。