2021/02/12
植物工場で使用する光源として、初期には蛍光灯が多く使用されたが、近年ではLED に置き換えられている。
LED は、蛍光灯に比べて寿命が長く(通常の使用条件で約4万時間、蛍光灯は6,000~12,000時間)、強い光強度を出すことができ、また波長を光合成の特性に合わせることが可能である、などの利点があり、今後はLEDに置き換わるものと思われる。
ただし、発芽初期の光源としては、蛍光灯の方が発育がよい傾向にあるので、種子発芽用としては蛍光灯は残る。
LED の方が寿命が長いといっても、LED装置の構造や使用条件によって、寿命は大きく変動する。
私が9年間使用した結果によると、各社の中でフィリップス社のLEDが最も早く劣化した。
フィリップス社のLEDは防水機能を優先しており、密閉度が高い。
そうすると、熱が装置内にこもり、劣化が進むのである。
次いで、昭和電工のLEDで、最も長く使用できたのは、レイトロン社のLEDである。
レイトロン社のLEDは8年間の使用に耐えて、まだ現役で働いている。
寿命の長いLED は熱を逃がす工夫がされている。
レイトロン社のLEDは、他社のLED と比べて光強度が強く、相対的に安価である。
私は、現在日本で入手できるLEDの中で、レイトロン社のLEDが植物工場野菜の生育に最も適している、という意見である。
波長特性も赤:青=2:1など、野菜の光合成特性に合った製品を用意している。
植物工場用のLED は簡単に作れるので、次々に製品となっているが、寿命についての試験がないものは安心して購入できない。
LED の宣伝の中に、クロロフィルa の650 nm の波長をもつので、最も効率がよいことを強調しているものがあるが、650 nmはクロロフィルをアセトンなどの溶媒に溶かした溶液の波長であり、野菜の光合成の作用スペクトル(波長ごとの光合成効率)をとると、600 ~660 nm に最大効率があるので、650 nmのみを強調するのは間違いである。
LED の中で、青色素子に色素を加えて白色光にしているものがる。
レタス類では通常に使用できるが、コマツナやシュンギクなど緑色の濃い野菜では、クロロフィルの生成が薄くなる傾向がある。
白色光は人の目にやさしいと言われるが、パソコンのディスプレイのように直接眼に入る光源ではないので、赤、緑、青のLEDで健康被害はないものと思う。
このコラム欄では、主に技術的な問題について解説する予定であるので、植物工場に関係することで、疑問に思うことがあれば、遠慮なく質問してください(文責 竹葉)。