マグネシウムの発育促進作用について

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 マグネシウム(Mg++)は、300を超える酵素の活性に必要であり、植物ではクロロフィルを構成し、Mg++ が欠乏すると葉はクロロフィルが合成できず、クロロシスを起こす。また、ATPのポリリン酸部分の安定化に必須であり、細胞内のイオン調節にも重要な役割がある。また、DNA Polymerase の活性中心には2分子のMg++ が必要であり、周りに比較的高い濃度のMg++ が必要である。

 種子発芽時には、通常の濃度の養液中に含まれる硝酸イオンにより根の伸長が抑制されるので、水で発芽させた後、養液を1/2に薄めた養液で苗を育てることが一般的に行われている。例えば大塚A処方をEC=1.8 で使用する場合、苗の育成にはEC=0.9 の養液を発芽種子に与える。この場合、Mg++ 濃度はEC=1.8では24 ppm であるので、EC=0.9 ではMg++ 濃度は 12 ppm となる。

 そこで、Mg++ 濃度が12 ppm の場合と48 ppm とで、いくつかの野菜について苗の生育を比較したところ、図1に示すように、Mg++ 48 ppm の場合苗の発育が非常に促進されることが判明した。図1をよく見ると、地上部も根も同時に発育が促進されている。地上部と根とに共通するのは分裂組織の存在である。分裂組織にはDNA Polymerase が存在するので、このMg++ の発育促進作用は、Mg++ のDNA Polymerase に対する効果ではないかと考えられる。

 そこで、DNA Polymerase の活性に対するMg++ 濃度の影響をみると、図2に示すように、Mg++ が 2mM 以上にならないと、DNA Polymerase 活性は100% にならないことが分かる。Mg++ 2 mM は 48 ppm である。したがって、養液濃度でいえばDNA Polymerase 活性が 100% になるためには、Mg++ は 48 ppm 必要であることになる。すなわち、一般的に行われている大塚A処方(EC=1.8)の1/2 濃度のMg++ 12 ppm では、Mg++ 濃度が低すぎるのである。

 従来、マグネシウム不足はクロロシスで判定されてきたが、クロロシスはMg++ 5 ppm 以下で起こるので、クロロシスが起きなくても、Mg++ 12 ppm で発育遅延が起きることは知られていなかった。通常の養液組成では発育遅延は起こらないが、種子発芽期など養液を薄めて使用する場合には、発育遅延が起こることを知る必要がある。

 Mg++ 濃度を 48 ppm に上げて苗の発育を促進すると、苗の発育が非常に促進されるが、この苗を移植すると、その後の発育が非常に早くなり、収穫までの日数も大幅に短縮されることが分かった。図3にその例を挙げている。この図で明らかなように、チマサンチェは通常のA処方のみでは、収穫までに約4週間かかるが、Mg++ 濃度を上げて苗の発育を促進させた場合、約2週間で収穫できるようになり、移植から収穫までの期間を半減することができた。野菜の種類により収穫までの期間短縮効果は異なるが、レタス類では7~10日ほど収穫時期が早まることが分かっている。なお、種子発芽期にMg++ 濃度を上げて苗を発育促進させ、収穫までの日数を短縮する技術は特許が成立しており、この技術を使用して事業を行う場合には、当社とライセンス契約を結ぶ必要がある。

図1 Mg++ 濃度を高めると野菜種子の発育が非常に促進される
図1 Mg++ 濃度を高めると野菜種子の発育が非常に促進される
図2 DNA Polymerase 活性に対するMg++ 濃度の影響
図2 DNA Polymerase 活性に対するMg++ 濃度の影響

DNA Polymerase 活性が100% になるには、Mg++ 濃度が 2 mM 以上必要であることを示す。

図1 Mg++ 濃度を高めると野菜種子の発育が非常に促進される

図3 種子発芽期にマグネシウム濃度上げて苗の発育を促進させると、移植後の成長が非常に速くなり、収穫までの日数を大幅に短縮できる Cont は通常の大塚A処方を使用した場合。図で++Mg は移植後の養液にもMg++を増強している