エコタイプ次世代植物工場は、乾燥地の主要な農業形態となる

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 地球温暖化が進行すれば、海面等から大量の水蒸気が大気中に蒸発し、その水蒸気は地上に均一に雨を降らせるのではなく、日本のように集中豪雨として1カ所に雨をもたらすだけでなく(独の環境NGO「ジャーマン・ウォッチ」は1912月に公表した報告書で、死者数や家屋損壊などの被害額から、「2018年に世界でもっとも影響を受けたのは日本だった」と指摘)、地域によっては全く雨が降らない乾燥地を作っている。中東、アジア中央部、アフリカ、オーストラリア、アメリカ西海岸などである。干ばつが続けば、人々は井戸を掘って地下水を利用しようとするが、地下水も有限であり、2011年に始まったシリア紛争では、それまで数年続いた干ばつによって、地下水から海水が出るようになり、農民は農業を放棄し、武器をもって反政府軍に流れた、という。乾燥が続けば農業が成り立たなくなり、やがては水の争いから紛争に至る。乾燥は人類の生存にとって大きな危険要因である。

 植物は、根から吸収した水分を葉から蒸散することによって成長している。問題はその蒸散量が莫大である点にある。作物が1kg 成長するのに要する水の量(要水量)は、その数10倍から数百倍になる。その水は植物体内を通過するのみで、成長にはごく一部しか利用されない。20世紀になり世界の人口は急激に増加したが、その人口増を支える農業用水は、生活用水や工業用水量よりはるかに多く、全用水量の8割にのぼる。農業はそれだけ水を消費する産業なのである。

 エコタイプ次世代植物工場は、太陽光発電などの自然エネルギーを使って閉鎖空間で水を循環再使用することを特色としている。水は植物工場内で循環するのみで作物は成長し、基本的に収穫量のロスのみで、水の消費はない。まさに、水を節約する究極の農業形態である。乾燥地に水をまいて農業を営む従来の農法と比較して、水利用の面でいかに優れた方法であるか、お分かりいただけると思う。筆者がこのエコタイプ次世代植物工場を9年間運営して得た結論は、資金さえあれば、すぐにでも乾燥地の農業に適用できる段階にあることである。一方で、太陽光発電の効率もあがり、丸紅が中東に建設し、昨年から稼働しているメガソーラーでは、発電単価が 2.7 /kWhという。これだけ安価に発電できれば、農業利用も十分可能である。

 問題はエコタイプ次世代植物工場が乾燥地の農業に役立つことを、具体的に示すことである。そのためには、パイロットプラントを建設し、そこで乾燥地の農業に役立つ作物を栽培し、収穫できる作物量とコストを試算することが必要である。私は、その作物として牧草が最初のターゲットになると思う。日本でも畜産農家は牧草を輸入している。その輸入単価を下回ることができれば、目処がつく。牧草の中でも牛などが好んで食べる牧草があるという。そのような牧草をより効率的に栽培できる養液系や栽培方法の工夫について検討が要る。さらに、パイロットプラント建設には資金が必要である。この方策が成功すれば、新産業が生まれ、世界の乾燥地に対して日本が大きく貢献できる手段ができることになる。

 エコタイプ次世代植物工場をこのような方向で発展させることに関心がある資金提供者、若者に期待する(下記の図はアメリカ気象海洋局が作成した2060年代の乾燥予想、現在よりもさらに乾燥がひどくなる、と予測されている)。