従来の植物工場野菜の品質が悪いのはなぜか?

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リーフレタス S社 露地野菜 e-スーパー健康野菜
ORAC値 240~330 300~650 1,200~2,100
ビタミンC 5~25 12~30 85~130
ミネラル Ca 14~20 60~80 120~400
Mg 12~20 20~70 65~250
Zn 0.2~0.5 0.2~0.6 25~30
残留硝酸塩濃度 ppm 3,600~4,100 1,800~4,500 600~800

 

 上記の表は、従来の植物工場野菜の例として、関西大手のS社のリーフレタスと露地野菜、e-スーパー健康野菜とについて、ORAC値(抗酸化成分の総量、μmol TE/100g fw)、ビタミンCmg/100g fw)、ミネラル成分のうちCa, Mg, Zn mg/100g fw)について比較したものである。
露地野菜は、近隣府県の産地リーフレタスの平均値である。

 S社のリーフレタスの数値のうち健康に役立つ項目は、いずれも露地野菜、e-スーパー健康野菜に比べて非常に低く、逆に残留硝酸塩濃度は非常に高いことが分かる。
残留硝酸塩濃度が高いと、体内でタバコの発がん物質ニトロソアミンが体内で生成する可能性があり、EUでは2,500 ppm 以上の残留硝酸塩を含む野菜は販売が禁止されている、S社の野菜はEUでは販売できない残留硝酸塩濃度である。
別の電気系企業の植物工場野菜は、8,000 ppm の残留硝酸塩濃度であった。
健康に直接役立つこれらの成分がこれだけ低く、逆に健康に害となる残留硝酸塩が高いのに、1株200円近くで販売されているのは、生産業者が野菜の品質について無関心であるためと、消費者も野菜の栄養価について無関心であるため、と想像されるが、農水省の調査によると、消費者の約8割は野菜の品質のうち健康に関係する項目の表示に関心を持っている、とのことであるから、上記のような数値が公表されないことが問題なのかもしれない。
いずれにしても、S社の数値は従来の植物工場野菜の代表とみて間違いない。

 従来の植物工場野菜の品質がなぜこれほど悪いのか。
技術的には、光熱水費を低く抑えるために光強度の低い光源を使用していること、さらに成長を促すために窒素肥料を多く使用しているためである。
ブログでも指摘したように、窒素肥料を多用しなくても成長のよい養液組成があるので、野菜の品質を上げるには、まず窒素肥料を抑える必要がある。
ついで、光源はレタスの場合でも最低 200 ~ 250 μmol/cm2/s あれば、品質は相当よくなるはずである。
それをしないのは、生産業者に品質をよくしようとする熱意がない証拠である。
それは、現在の品質でもよく売れているという背景があるためでもある。
それは、また消費者の問題でもある。

 従来の植物工場野菜は、現状ではカット野菜市場に多く出荷されているので、カット野菜の品質問題にも関係してくる。
カット野菜は、高齢化や世帯のシングル化を背景に急速に普及しているが、カット野菜の原材料の品質は確保されておらず、カット野菜を購入して食べてみても、「野菜らしきもの」を食べているだけで、本来野菜から供給されるべき抗酸化成分やビタミン、ミネラル類は非常に少ないことに気をつけるべきである、日本人は古来野菜と海産物から、ビタミン(抗酸化成分を含む)、ミネラルを供給してきた歴史があるが、現状の日々の食生活では「野菜をなぜ食べる必要があるのか」について、改めて考える必要がある。